キートン爺の北海道サイクルツーリング紀行(その2)

2004/09/12〜22

ツーリングの軌跡(GPSからの軌跡データをフリーソフト「カシミール」で描きました)
赤:サイクルツーリング     青:輪行

No 日 付 コース 移動距離
[km]
移動時間
[hr]
平均速度
[km/hr]
Max速度
[km/hr]
ポタリング
[km]
総合距離
[km]
1日目 2004/09/12稚内空港〜森林公園CP23.41.2219.130.55.629.0
2日目 2004/09/13稚内〜羽幌131.16.3320.645.56.3137.4
3日目 2004/09/14羽幌〜浜益113.35.5920.445.02.8116.1
4日目 2004/09/15浜益〜余市114.36.2818.140.52.2116.5
5日目 2004/09/16余市〜島牧114.55.7120.044.50.2114.7
6日目 2004/09/17島牧〜江差128.46.3120.345.02.3130.7
7日目 2004/09/18江差〜知内111.15.3620.847.08.7119.8
8日目 2004/09/19知内〜大沼74.53.6720.539.50.875.3
9日目 2004/09/20大沼〜豊浦126.95.6022.743.00126.9
10日目 2004/09/21豊浦〜室蘭〜千歳47.62.5718.538.011.559.1
11日目 2004/09/22移動日
合        計 985.148.6420.340.41025.5

【荷物及び携帯品目】

本年7月の第1回ツーリングとほぼ同じ品目に、潤滑油、日焼け止め、携帯ラジオ、及びビーチサンダルを加え、衣類の数は減らした。 荷物携帯の方法に問題があるが、7月の第1回ツーリングと同じスタイル、すなわち、バイクに大小3個のバッグを積載し、背中にDバッグを背負って走ることにする。背中のDバッグは止めて、すべてリアサイドバッグに収納したいところだが、爺のバイクにポスト付きキャリヤーを取り付けるのは難しいのだ(フレームエンドにダボ穴がない)。


【旅日記】

 【第1日目:040912(日) 移動日】
自宅から三島駅まで走り、新幹線〜フライトを輪行する。輪行は、前後の車輪を外し、リアディレーラーを発泡ポリエチレンシートで保護して、フォーク先端に長さ100mmの10ψアルミパイプを取り付け、フォークの両先端を固定する。輪行袋は、オーストリッチ社の軽量モデル「ロード320」。付属のエンド金具でフレームエンド両端をしっかり固定する。

タイア空気圧は、推奨最大圧の7バール。タイアに劣化が無いのなら、最大許容圧は、おそらくこれの1.5倍(10バール)ほどが見込まれるため、たとえ、飛行機内気圧が0バールになったとしても、タイア内圧は最大8バールであり問題はないはずだ。これまで、この方法で問題を起こしたことはない。

東京から羽田間は、モノレールで行く。大きな輪行袋その他を抱えた爺として、今日は、日曜日で客数が少なくて助かる。ANA手荷物窓口では、例によって、「荷物が破損してもANAは損害賠償しませんよ」なる書類にサインをさせられる。

稚内行きANA第573便(激安チケット)は、定刻通り12:30に羽田を飛び立つ。今日は、全国的に晴れていて、特に北海道は空気が澄んでおり、遠い景色までよく見える。 14時半頃、機体は稚内空港に到着。バイクを手渡しで受け取り、空港の待合室のすみっこで組み立てる。荷物を積載し、外へ出て記念写真を撮り、15:20に走り出す。

寒ウ〜。気温は21℃というが、北西からの風が体温を下げるのだ。海沿いの国道238を西へおよそ30分走ると、稚内市街だ。今日の宿は、森林公園キャンプ場であり、市中心地の高台にある。キャンプ場へ寄る前にノシャップ岬まで走ることにする。

ノシャップ岬16:15着。岬には、大きな紅白ツートーンカラーの灯台と利尻島を望む小さな公園がある。この公園で、横浜市からキャンピングカーで魚釣りを楽しみながら北海道を回っているという、爺と同年代のおじさんと記念写真を撮り合う。爺は、かつて、横浜市には約10年間住んだことがあり、会話は盛り上がる。

岬から稚内温泉「童夢」へ行くかどうか迷う。あたりはもう黄昏どきだ。温泉へ寄ると、暗い中をキャンプ場まで走らねばならないだろう。よし、今日は、汗はかいていないので、風呂は止めよう。16:24、今、来た道を稚内市街のキャンプ場をめざす。市役所付近で、今日の移動は終了し、あとはポタリングモードにする。今日の移動は、23.4km、1:13、30.5km/hr、19.1km/hr(順に、移動距離、移動時間、max速度、平均移動速度。以下同じ)。

キャンプ場までは、急激な坂だ。爺の足では、とても上れないのでバイクを押して行く。キャンプ場には、10組ほどがテントを設営している。早速、爺もお隣の青年に挨拶して設営する。この青年は徒歩旅行だそうだ。他の人達は、モーターバイクや車でのツーリングであり、チャリダーは、爺ひとり。

高台にあるこのキャンプ場からは、稚内市街の灯りがきれいだ。今日はよく晴れていて、星も輝いている。爺は、星を見ながら夕食をとる。先ほど、下界のコンビニで手当てした弁当とつまみだ。もちろん、定番の500mL「魔法の水」2本を忘れることはない。

しかし、このキャンプ場は、蚊が多い。ゴアテックスの上下レインスーツで防御していても、蚊の大群は、顔を刺しにかかる。爺は、たまらずテント内に逃げ込む。

 【第2日目:040913(月) 稚内〜羽幌】
今日は、この爺の62回目の誕生日だ。朝5時過ぎ、テントから外を眺める。曇りだ。ラジオで天気予報を聞く。な、なんと、今日は曇りから雨だというのだ。そりゃあないよ、ツーリング前日の予報では、今週いっぱい晴れだったはずだ。いったいぜんたい、いつの間に変化したのだ。原因は何なのだ、と、憤りたくもなるが、自然現象には勝てない。夜露で濡れたテントの水滴を払い、たたみ、準備完了して、6:20に市内ポタリングに出発する。寒いので上下レインスーツを着込む。

有名な防波堤ドーム(素晴らしい)やJR稚内駅を見学した後、朝食用おにぎりを買い、7:10に羽幌町を目指し、道道106を走る。南稚内駅を過ぎ、なだらかな坂を上ると、礼文島と利尻島がぼんやり見える。しかし、利尻富士の頂上付近は雲の中だ。風はほとんどない。

抜海岬を曲がったころより、雨がぽつぽつ落ちだす。一方、利尻富士はすべて見えてくる。道道106は、電柱やガードレールも無い原野の中を通るライダー憧れの道だそうだ。確かにそのとおりだ。車数は少なく、弱い雨の中を快調に走る。あ〜あ、晴れていたらな〜。

9:20、稚咲内砂丘駅着。ここまで、42.9km、1:52、38.0km/hr、22.9km/hr。このあたりは、有名なサロベツ原野の一角だ。砂丘駅にもこじんまりした花園があり、爺は雨の中、ここを散策しながら、朝食のおにぎりをほおばる。はまなすなど、すべての花の時期は終っているが、遅れて咲いてきた一、二輪のはまなすの花を冷たい雨が打つ。そのむこうには、利尻富士。

9:50、砂丘駅を出発して手塩町をめざすが雨はだんだん激しくなる。北緯45度の碑で記念写真を撮る。長い天塩川の橋を渡り、手塩町中心地へと入ったそのとき、前輪がシューと音を発て、空気が抜けていく。ありゃ〜パンクだ(11:15)、小さなガラス片が突き刺さっているのを確認する。やれやれ、今回はついていないな、ツーリングのはじめから雨とパンクだ。

苦労して、予備チューブに交換し、携帯用ポンプで空気を入れるが、とても推奨最低圧の5バールにならない。地元の人から紹介された車修理工場を訪ねるが、ちょうど昼食らしく、出払っている。町をうろうろしながら、見つけたガソリンスタンド(GS)に駆け込み、コンプレッサーで加圧してほしいとたのむ。しかし、GSのおじさんは、普通の自転車ポンプ(バルブが合わない)それから足踏み式ポンプを持ってくる。足踏み式は、運良く仏式バルブに合致し、圧力計もついていたので6バールまで空気を入れる。

12:55、GSのおじさんに丁重にお礼を述べ、雨の中、遠別町をめざして出発する。パンクのため、1時間40分も時間をロスしたが、今日は、雨だろうが、槍だろうが、予定の羽幌町まで走る覚悟だ。気力は充実、国道232(別名「天売国道」)をひたむきに走る。

13:57、遠別町の道の駅「富士見」で小休止。ここまで、88.2km、4:04、38.0km/hr、21.7km/hr。初山別村に入ると、アップダウンが激しくなり、爺の体力を奪う。

15:30、初山別村バス停「豊岬」の待合室中に入り、ひと休みして軽く食べる。

17:00、本降りの中、道の駅「ほっとはぼろ」着。今日の移動は、131km、6:20、45.5km/hr、20.6km/hr。晴れていれば、朝日公園キャンプ場で野営する予定だったが、この雨では野営は中止だ。羽幌の街をあっちこっち、うろうろしながら宿を探す。しかし、運の悪いことに、明日、入札があり、どこもここも満員だ。こんな日に入札なんかやるなよと、恨みたくもなる。やっと、6軒目にY旅館を紹介され、泊まることができる。この宿には、駐輪所もある。やれやれだ。風呂に入り、洗濯機を借りて洗濯をして、夕食をとると疲れがど〜っとでる。

毎日のことだが、爺の奥方に、無事に走っている旨を電話する。誕生日にしては、ハードな一日だった〜、と。奥方は、電話のむこうで「与えられた試練よ」と事もなげにのたまう。

そうか試練か、気力で何とか乗り切ったぞ。

 【第3日目:040914(火) 羽幌〜浜益】
朝5時頃、目を覚ます。外は大雨だ。しかし、朝食を食べ、出発する頃になると小降りになる。天気予報では、この後回復するそうだ。予報が当たることを期待して、Y旅館を7:25に出発。朝の支度で忙しいにもかかわらず、女将さんが玄関先まで見送ってくれる。明るくて、親切な女将さんだった。

今日は、強い北西の風だ。南へ向かう爺にとって、追い風である。天売国道と呼ばれる232を快調に走り、8:43、小平町の道の駅「おびら鰊番屋」に到着。ここまで、26km、1:19、 38km/hr、22.6km/hr。鰊番屋の隣に建っている「旧花田家番屋」は、明治時代当時の生活漁業文化を今に残す国指定の重要文化財だそうだ。大きな建物だが、補修工事中で中には入れない。写真をと思い、敷地内に入ると、早速、現場監督から立入り禁止の注意だ。

8:55、「おびら鰊番屋」を出発。天気は回復したが、強い風が吹き荒れる。追い風でよかったな〜、もし、逆風だったら、とても走れそうにない。今日は、天候に感謝、感謝。

やがて、本ツーリング最初のトンネル(小平トンネル)が見えてくる。ここは海側の地方道を迂回する。よく整備された迂回路を気持ちよく走る。ここの高台には「望洋台キャンプ場」があり、ロケーションがすばらしい。また、すぐ近くに日帰り温泉「ゆったりかん」もあり、野営したい場所のひとつだ。

小さなアップダウンを繰り返して、留萌市街に入る。留萌は大きな街だ。近道して市街地に入ったため、何度も信号に引っかかる。やっと、街を抜け、郊外のコンビニの店先で小休止。10:00、ここまで、51.6km、2:15、38km/hr、22.8km/hr。

10:25、留萌発。海岸に沿って増毛町へ向かうが、強風のため日本海の波が堤防を乗り越えて国道を洗い、波しぶきが、爺と愛車を濡らす。これでは、バイクは錆付くな。

増毛着11:20、ここまで、68.6km、3:09、38km/hr、21.8km/hr。増毛町には、明治〜大正時代の建築物が多数存在し、これらは北海道遺産に指定されている。このような建物を見るのが好きな爺は、早速、増毛駅から駅前通りをポタリングしながら、見学だ。  

造り酒屋「国稀酒造」や旧商家「円一本間家」、少し離れた「陣屋跡」などは、なかなか風情がある建物だ。その後、増毛駅近くの「寿司のまつくら」で昼飯にする。今日は、遅れた誕生祝をひとり行おうと、少し、豪勢に生ちらし特上を注文する。もちろん、定番の魔法の水もいっしょだ。いくら、うに、あわびその他諸々のサカナを堪能して、外で、出発準備をしていると、二人連れのお嬢さんが、すし屋の前で記念写真を撮ってくれと爺にたのむ。快く引き受け、立ち話となる。会話の始まりは、チャリで、どこから、どこまで、いつから、いつまで、お住まいは・・・の、いつものパターンだ。なんと、彼女たちは、爺の住む隣町の沼津市から車でツーリングに来たのだという。世の中、広いようで狭いな〜。

爺は、彼女たちと別れて、再度、増毛駅に向かう。ここのレトロ調電話ボックスから、明日の余市町の宿を予約するためだ。しかし、空室がない。5軒目にやっと、民宿F荘をゲット。

13:32、増毛を出発して、今日の野営地である浜益村海浜公園へ向かう。ここから先は、トンネルの連続だ。牛ちゃんこと、牛嶋氏のトンネルレポートを参考にしながら走る。しかし、トンネルはいつもながら走るのはいやだな〜。古いトンネルは、道幅が狭いので大型車が来たときは道の端っこで待機してやり過ごす。バイクの前後には、それぞれ、2個ずつ、LCD(光ダイオード)フラッシャーを取り付けているのだが、相手は気付いてくれるかな〜。

雄冬(おふゆ)地区まで走ると、丘の上に展望台がある。その坂を見て、上るのを止める。疲れた爺の足では、とても上れそうにないのだ。さらに、すこし進むと、雄冬キャンプ場、「雄冬冷清水」と白銀の滝がある。キャンプ場は、道路端で土のサイトだ。ここで野営はやりたくないな〜。「清水」の方は、飲用不可と表示されている、うまそうな冷水なのにね。白銀の滝はそれほど大きなものではないが、これほど海の側にある滝は、他に見た記憶はないな〜。

さらに多くの大小トンネルや履道を抜け、40分ほど走ると、浜益村役場に着く。海浜キャンプ場は、役場から、2kmほど南下した場所だ。

キャンプ場到着16:18。今日の移動は、113.3km、5:35、45.0km/hr、20.4km/hr。ここは、全面芝生サイトの広くて素晴らしい第1級のキャンプ場であり、しかも無料だ。しかし、利用者は爺ひとり。なんという贅沢。

爺は、バイクと身体を水で洗い、テントを設営して、真っ赤な夕焼けを十分に鑑賞した後、道路沿いの飲食店に行く。この界隈は、民宿や飲食店が多い。早速、ほたて、サーモン、いくらの三色丼をつっつきながら、魔法の水で疲れをとる。至福のひとときだ。

夜、天候はすっかり回復して、夜空を星達が埋め尽くす。天の川がはっきり見える。天の川を見たのは何十年ぶりだろう。

 【第4日目:040915(水) 浜益〜余市】
日の出とともに起きだす。天候は快晴だが、逆風がやや強い。朝露で濡れたテントを乾かし、コンビニ弁当をキャンプ場の高台で食べ、ゆったりと8:27に出発。すぐに、送毛トンネル(長さ1901m)までの上り坂となる。爺は、ここをゆっくり上る。海抜200mほど上ると送毛トンネルだ。このトンネルを抜けると、高台を大小いくつものトンネルを通る。濃昼(こみひる)トンネルは、狭い、真っ暗、道路面最悪の今回ワースト1のトンネルだ。ここはバイクを押して歩く。さいわい、車数が少ないので助かる。

厚田村に入り、50〜100mほどの高台をアップ、ダウンしながら気持ちよく走る。海の向こうに霞んで見えるのは、積丹半島だろうか。美しいながめだ。

10:12、厚田公園で一休み。ここまで、27.7km、1:34、40.5km/hr、17.7km/hr。気温が上がってきたので、上下ゴアテックスレインスーツを脱ぎ、日焼け止めを顔、足、腕に塗り込む。周りには、モーターバイクツーリング者でいっぱいだ。

10:33、厚田公園を出発して、国道231を石狩市へ向う。

長さ1.5kmほどの石狩河口橋を渡り、5、6kmほど進むと、小樽方面へ行く国道337とのインターチェンジにぶつかるが、爺は、337には進まず、道道44を石狩市役所方面へ向かう。この理由は、昼食にしたいからだ。役所の近くは飲食店が多いはずだ。

12:17〜13:17昼食。ここまで、60.7km、3:10、40.5km/hr、19.1km/hr。 昼食後、道道44から国道337に乗り換えて、小樽を目指す。337は、二輪帯も広くて走りやすい。小樽へ行くには、337から国道5へ乗り換えねばならない。さて、どこで乗り換えるか、地図で確認する。地方道を通り、銭函駅を経由しよう。銭函からのキツイ坂をあえぎながら上る。このあとも、小樽市街まではいくつかのトンネルとアップダウンが続く。

14:37〜14:47、国道5のPA「ハリウス」で一休み。ここまで、81.3km、4:16、40.5km/hr、 19.1km/hr。

小樽市街に入ると、車数はすさまじく多くなる。爺は、なんとかここを早く脱出したい。小樽運河を見たい願望もあるが、それよりも、この人ごみと車がイヤだ。何度も信号に引っかかるが、確実に余市町方面へと向かう。途中、塩谷トンネルをはじめ、数個のトンネルを通るが、ここのトンネルすべて、今回のワースト5だ。牛嶋氏のレポートでは、ここは、地方道956からフルーツ街道を抜けた方がよいとされていたが、爺は、うかつにも956へ曲がるのを忘れてしまった。引き返すのもしゃくだ、ままよ、このまま突進だ!。結果として、狭くて車数の多いトンネル内の歩道を、バイクを押して歩くことになる。

余市町の海は、雄冬地区とは異なり、穏やかな風情だ。町の中心に入り、国道5から別れて、立派な大川橋を渡り、国道229を古平町へ向かって少し走ると、今日の宿、民宿F荘の看板が見える。

17:00、民宿F荘に到着。今日の移動、114.3km、6:17、40.5km/hr、18.1km/hr。すぐにバイクを洗い、F荘のコインランドリーで洗濯。この民宿は、車庫に愛車を保管してくれる。感謝。

夕飯のとき、道路関係の団体客から、神恵内村大森大橋の迂回路について情報を得ようとするが、誰もその迂回路を通過した経験がなく、詳細はよくわからない。先日の台風18号により、神恵内村の大森大橋が海面に落ち、積丹半島を回る国道229のこの部分が不通なのだ。

とにかく、その迂回路は、山の高所へ上るのだという。そうだとすると、熊がこわい。やはり、今回は、積丹半島を回るのは止めにしよう。そうすると、明日の泊りは、島牧村だ。ここには近くにキャンプ場がないので、20時ごろ、宿を探す。TEL一発目で、民宿「本庄」を予約できた。この民宿の本業は漁師さんということから、魚好きの爺には、ぴったりだ。

 【第5日目:040916(木) 余市〜島牧】
7:15、朝食をしっかり食べ、民宿Fを出発し、街中をゆったりポタリング。

7:40、JR余市駅前から島牧村を目指し、国道5を走る。今日も快晴で、弱い逆風だ。

途中で若いチャリダーと並走しながら会話するが、爺の方が荷物量少なく、タイヤ幅も狭いので、追い越して進む。しかし、途中のトイレ休憩と坂上りで暑くなり、上着をぬいでいる間に抜き返される。彼は、これから、洞爺湖まで走り、キャンプするのだそうだ。

長さ約2000mの穂積トンネルは、暗くて、狭くて、大型車ぶんぶんだ。注意深く進み、トンネルを抜けると、266mの穂積峠だ。このあとは、岩内町までの下り坂をいっきに走る。途中、逆光の中に銘峰、羊蹄山(1898m)の美しい姿を見る。来年は、今年行けなかった積丹半島を回った後ニセコへ出て、近くから羊蹄山を拝むかな。

9:46〜10:00、道の駅「いわない」で一休み。ここまで、39.4km、1:58、44.5km/hr、 19.9km/hr。

道の駅を発って5、6km走ると、今回の旅において、もっとも長い雷電トンネル(3570m)を通る。広くて、車数は少なく、走りやすいトンネルだ。トンネルを抜けると、奇岩が海岸に点在する。有島武雄の文学碑前で記念写真。山を見上げると、木々の葉は茶色だ。このあたりは、紅葉する木々は無いようだ。それとも、塩害なのかな〜。

岩内町〜寿都(すっつ)町〜島牧村を結ぶ国道229(ソーランラインと呼ぶらしい)は、車数少なく、とても走りやすい。爺は、バックミラーで後方を確認しながら、車道を軽快に走る。後ろから車が来れば、二輪帯へ逃げる。今日は、快晴で気分も爽快、鼻歌まじりだ。海の向こうに霞む半島の先端は、これから目指す弁慶岬だ。

12:00〜13:10、寿都町のレストラン「うたすつ」で昼食。ここまで、72.3km、3:36、44.5km/hr、20.1km/hr。

14:00〜14:15、弁慶岬で一休み。ここまで、87.4km、4:23、44.5km/hr、20.0km/hr。

弁慶岬では、男女6人のお年寄りが東屋で食事中だ。その中のひとりが、爺に近づき、弁慶の彫像の前で写真を撮ってくれ、しばし、会話する。ここでも、遅れて咲いてきた、ピンク色のはまなすを見る。しかし、この旅の主目的である鮭の遡上は、いまだ見ていない。今週はじめに降った大雨のため、水が濁ったことが原因だろうけど、そろそろ、鮭をみたいものだ。河川を通るたびに、橋から下をながめても鮭のサの字も確認できない。

国道229のいくつかのトンネルを通り、島牧村へと走る。途中の泊川や千走(ちわせ)川にも、鮭は見えない。そうこうするうちに、15:25、本日の宿である、民宿「本庄」に到着する。

今日の移動、114.5km、5:42、44.5km/hr、20.0km/hr。

宿は、4室しかないが、爺が通されたのは、床の間付き和室10畳の立派な部屋だ。隣の和室12畳もお客はいないので、使用してよいというのだが、一部屋で十分だ。

洗濯機を借り、今日の分を洗濯して、自転車を洗い、チェーンに潤滑油をたらす。日が暮れるまで、テントとシュラフを干す。

宿の前は、国道229を挟んで日本海だが、車数少ない国道はまったく気にはならない。ここからの夕焼けも素晴らしい。風呂上りに魔法の水を飲みながら、今日の走りをまとめる。

やがて、夕食だ。食卓には期待通り、海の幸、山の幸が多数並べられている。夕食の飲み物は、魔の水にする。2本注文して楽しむが、サカナの方は、まだ十分余っている。しかも、魔の水がやたらと美味いのだ。さらに、もう1本追加する。魔の水の銘柄を女将に尋ねると「北の誉」だという。この水は、爺の舌にピッタリだ、これを銘酒といわずして・・・だ。

 【第6日目:040917(金) 島牧〜江差】
いつものごとく、しっかり朝食を食べる。今朝、取れたてのイカソーメンを若女将が配膳に並べる。少し甘みがあり、とても美味い。漁師さんの朝は早いな〜。

支払をすませ、若女将と4歳のお嬢ちゃんに見送られ、7:10民宿を出発。広い部屋で休み、美味しいものを腹いっぱい食べ、昼の弁当、魔法の水1本と魔の水3本で7000円と数百円は、大満足。また、来たいな〜。

曇り空の中を10kmも走ると、再び、トンネルの連続だ。車は少ないので、トンネル内でも車道を走る。トンネルから出ると、山側は切り立った崖が続き、海側は、奇岩だらけだ。茂津多岬を過ぎ、瀬棚町に入ると、奇岩の数はさらに多くなる。獅子岩、マンモス岩、さらに胴体が空洞の岩も出現する。瀬棚町中心部には、3本杉岩とろうそく岩なる奇岩が海中にあり、その周辺は海水浴場/公園になっている。自然は、面白い作品を造るものだな〜。

9:03〜9:20、3本杉岩公園で一休み。ここまで、36.8km、1:38、45.0km/hr、22.3km/hr。

3本杉岩公園を出発して、川幅10mほどの馬場川から、川底を覗くと、死んだ鮭を確認する。川岸にはうちあげられた鮭の屍骸をカモメがついばんでいる。やはり、鮭は間違いなく遡上しているのだが、見る機会がないだけなのだ。

瀬棚町役場を過ぎたころから、弱い雨だ。あわてて、雨支度をして、再度、走り出す。しかし、雨は弱く、大降りにはならない。

北檜山町からは、上り坂となる。海抜180mの太檜越峠を越えて、いっきに大成町へ下り、少し、南下すると、長さ100mほどの橋を渡る。橋の上から下を覗くと、目的の鮭がいる。この川は臼別川であり、この橋は臼別橋であることを後で知る。12、3匹くらいが、ゆったりと流れに身を任せている。彼らは、さらに上流をめざすのだろうか。しばらく、鮭を見て、熊石町へと向かう。

熊石町のコンビニで魔法の水を買い、1、2km走って熊石漁港で昼食にする(12:18〜13:30)。今日は民宿「本庄」の特製おにぎり弁当だ。ここまで、86.5km、4:06、45.0km/hr、 21.1km/hr。

熊石漁港は、長い堤防で海を囲っていて、その中をばしゃばしゃと鮭がはねる。多くの釣り人がこの鮭をねらって竿を立てているが、そう簡単には釣れそうにない。鮭は河口でしばらく滞留して、自分の身体を海水から、だんだんと真水に馴らすのだそうだ。海水と真水とでは、細胞への浸透圧が違うからだろうか。

熊石町の見市川でも鮭の遡上を見る。しばらく立ち止まって観察する。ここは、さきほどの臼別川より、鮭の数は少ないく、5、6匹がゆったりと泳いでいる。

14:47〜15:00、乙部町の道の駅「ルート229平和台」で一休み。ここまで、107.0km、 5:09、45.0km/hr、20.8km/hr。前衛彫刻の前で記念写真。

分厚い雲がたれこめる中、江差を目指す。車の数はだんだん多くなる。15:54〜16:42、江差温泉「湯の華」で入浴。入湯料370円と激安。ここまで、123km、5:59。

17:07、江差町かもめ島に到着。今日の移動、128.4km、6:19、45.0km/hr、20.3km/hr。

かもめ島は、海抜20m、幅1kmほどの小さい島であって、自転車、バイクは乗り入り禁止の立て札が立っている。おいおい、無茶いわないでよ。どうやって荷物をキャンプ場まで上げるのよ。と、爺ひとり、立て看板の前で思案に暮れていたら、地元らしき人が、自転車は乗り入れてもかまいませんよという。それじゃあといって、乗り入れ、自転車と荷物を階段から担ぎ上げる。ここを設計した人はきっと野営した経験なんかないな。

かもめ島には、キャンプ場、神社、広場、売店兼民宿などが点在する。キャンプ場の芝は伸び放題で荒れている。こんな場所に野営したくないと思いながら、売店まで行くと、売店前の広くてきれいに整備された芝生で野営してもかまわないと、売店のおじいさんがいう。早速、江差追分の碑のある場所から少し離れた位置にテントを張る。

江差の夜景と漁火を見ながらコンビニ食を食べ、飲み、爆睡。

 【第7日目:040918(土) 江差〜知内】
朝、人の声で目を覚ます。まだ、暗い5時前だが、すでに観光客または地元の人達が、このかもめ島を散策しているのだ。爺は、仕方なく起きだし、島を散策する。そのうち、老若男女が、かもめ島に建つ江差追分の碑の前に集まり、追分を詠いはじめる。そういえば、確かこの時期に、江差追分の全国コンテストが江差追分会館で開催されることを聞いたことがあった。そのための稽古なのかな〜。追分の稽古は、一組、二組ではない。次から次に、小雨の中で詠いだす。中には、尺八の伴奏入りだ。稽古を終えたひと組のおばさん達が爺に声をかける。爺は、朝から結構な唄を聞かせていただきましたとお礼を述べる。おばさん達は、嬉しそうに爺の旅姿、特に軽量テントに興味あるらしく、テントの中を覗き込む。

爺は、うかうかしていられなくなった。あわてて、テントを片付けて、旅支度を始める。島の奥の方で、おにぎりを食べ、重い荷物を海岸までバイクごと降ろす。かもめ島の下には、でっかい頭を細い胴体で支えている奇岩「瓶子岩」があり、この前で記念写真を撮る。また、明治維新に沈んだ帆船、開陽丸の復元船の前で記念写真を撮ろうとしたところ、あれ〜っ、デジカメの電池が切れてしまう。おいおい、今回のツーリングのため、新しく買ったデジカメのマニュアルには、電池は、400回の撮影に耐えうると書いてあったゾ。まだ、撮影は、100回ほどだ。マニュアルを信用して、充電器は持参していない。どうしてくれるんだ、メーカーにクレームをつけよう。ユーザーは、液晶でモニターしながら撮影したとき、どのくらい電池が持つのかが重要な関心ごとなのに、メーカーは、このことについて、きちんと検証していないのだが、この爺にも危機管理に対する“あまさ”があったな。反省。

8:10、小雨の中、レインスーツ上下を着て、知内(しりうち)町を目指して江差を出発する。風は、逆風だ。コンビニでお茶とおやつを買い込む。

上ノ国町に入り、大崎への坂を上ると、日本海を背にした、すし店兼民宿「宮寿司」の独特の鋭角な屋根を有する洋風建物が見える。ここは、牛ちゃんこと牛嶋氏ご推薦の宿だ。そのうち、爺もここに一泊して、サカナを食べ、魔の水をチビリチビリ・・・あ〜、いいな〜。

国道228の別名福山街道(松前国道とも呼ぶらしい)は、アップダウンが激しい。しかも、小雨で逆風だ。爺はゆっくりと進まざるをえない。人生と同じで、逆風はいつまでも続くわけがない、そのうちに順風に変わるはずと淡い期待をするのだが、いつになるのやら。

江差から25kmほど走ると、海沿いの石崎川に達する。そこでは、高校生二人がしきりに川を眺めている。鮭だなと直感し、橋の欄干から下を眺める。いるいる、70cmほどの鮭が浅瀬にうじゃうじゃ、ばしゃばしゃだ。中には、川底に卵を産み付けるため、川床を作っている雌鮭や雄同士が雌鮭をめぐって闘争している。また、ペアで仲良く身を寄せて泳いでいるのも見る。これらは、TV等で見る映像そのままを、今まさに、ナマで見ているのだ。爺は、すっかり興奮、感激し、しばし、時を忘れる。

道は、相変わらずアップダウンの連続であり、風は逆風で小雨だ。

10:07〜10:20、高台にある小砂子トンネルを出て、一休み。ここまで、32.8km、1:50、34.0km/hr、17.8km/hr。やはり、移動効率は悪いな〜。

爺は、ただ、もくもくと走る。松前町に入り、進路方向が南から南東へ変わってから、やっと、逆風から横風となり、道も平坦になる。雨も止み、ついに三重苦から開放される。

12:09〜13:12、松前町役場にあと2、3kmのところで、ラーメン店で昼食にする。ここまで、62.0km、3:15、44.0km/hr、19.0km/hr。

昼食後、北海道最南端の白神岬を目指して走る。風は、完全に順風だ。しかも、道は平坦。国道228を快調に走る。左手に小ぶりな松前城が見えるが、ここを見学する気は起きない。津軽海峡のむこうに、津軽半島がぼーっと霞んで見える。

白神岬着13:41、ここまで、73.8km、平均速度19.9km/hrとバイオエンジンの調子は上向く。白神岬は、誰かの短歌を石に彫った碑があり、宗谷岬や納沙布岬に比べると静かな雰囲気でいいものだ。観光客は爺ひとり。

さらに走って、14:12〜14:25、福島町道の駅「横綱の里ふくしま」で一休み。ここまで、85.2km、平均速度20.4km/hr。福島町は、この町が生んだふたりの横綱、千代の山と千代の富士に関連するものでいっぱいだ。

知内までは、160mの峠越えだが、追い風に乗って、ぐんぐん走る。15:20〜15:37、道の駅「しりうち」で一休み。ここまで、104km、平均速度20.5km/hr。ここでは、中年男性から話しかけられる。話の内容はいつものパターンだ。爺の愛車に取り付けたハンディGPSがめずらしいらしく、多くの人が見入る。道の駅から今日の野営地のファミリースポーツ広場キャンプ場までは、数kmの距離だ。なだらかな下り坂を猛スピードで走る。

15:54町営キャンプ場着。今日の移動は、111.1km、5:21、44.0km/hr、20.8km/hr。今日は、後半の移動速度の方が前半よりも速かった。順風さまさまだ。

野営者は、爺を含めて3組。早速、テントを張り、約3km離れた「こもれびの湯」へ入浴に行く。入湯料は400円。大広間の休憩室を備えた、きれいな施設だ。温泉の帰りに、スーパーマーケットへ今夜の食料を買出しにゆく。冷やっこ、かつおの土佐造り、野菜サラダにおにぎり、定番の魔法の水。

夜になって、大雨が降る。風も強い。そのうち、雷は鳴り出す。このキャンプ場は、河川敷に造られている。河川敷での増水災害はニュースにしばしば登場するので、小心者の爺は気が気ではない。

キャンプ場入り口には、「大雨が降ると、このキャンプ場は、冠水するおそれがあるので、撤退願う」旨の注意書きがある。おいおい、どれくらい降れば「大雨」なの。過去、このキャンプ場が冠水したことはあるのかな。外来チャリダーの爺はどこへ撤退すればいいのよ。この注意板は欠陥だらけで無責任だ。地元の人は、どの程度雨が降れば冠水するのかを経験的に理解しているけど、外来者の爺には、分からないのだ。“雨の河川敷”は人の生命を左右するというのに、行政側は、かなり無頓着だな〜。知内町は、安全に不安があるのなら、この場所をキャンプ場にしてほしくないよ。外来者は、ここへ来て、はじめて河川敷のキャンプ場だと分かるのだから。

爺は、真夜中に雨の中を知内川の水かさを観察にゆく。水位を見て、冠水は起きそうにないと判断する。

 【第8日目:040919(日) 知内〜大沼】
夕べの大雨さわぎで、寝不足だ。朝方には、雨は止んだが、すっかり朝寝坊。

今日は、休養日にしよう。と、言っても、走行距離を目標の120km/dayから、短くするのであるが。残りの日数と距離を計算して、今日は、大沼公園キャンプ場に泊まる計画にする。人ごみと車の多い函館をショートカットすれば、走行距離はおよそ70kmだ。

9:15、朝食抜きで、キャンプ場を出発する。天気は回復しそうだ。国道228、通称福山街道を函館へ向け走り出す。今日は、3連休の中日であり、自家用車や観光バスが多いようだ。木古内を過ぎて、しばらく走ると、前方に鎌倉の江ノ島に似た島影が見える。もしかして、あれは函館の大鼻岬かな。どうもそのようだ。

しかし、走り出して1時間もすると、爺のバイオエンジン燃料は切れ始める。

10:35〜11:05、茂辺地(もへじ)で、街中に入り、パンと牛乳などを買い求めて、遅い朝食にする。ここまで、31.6km、1:19、35.0km/hr、23.9km/hr。天気はすっかり回復した。

函館に近ずくにしたがって、道路幅は広がり、車数は増える。しかし、二輪帯は広いので、走りやすい。途中、セメント会社の長い大きなコンベアが函館湾の沖まで伸びている。きっと、函館湾は遠浅なのだ、あのコンベアの先まで行かないと大型船は接岸できないのだな。

七重浜から、国道227へ移り、北上する。右方向に横津岳など、雨上がりの山並みが見える。途中、道道96へ移り、緩やかな坂を上り始める。しかし、再度の燃料切れだ。

12:14〜13:13、そば処「美林」で昼食。ここまで、55.6km、2:27、35.0km/hr、22.6km/hr。

道道96の坂を上ると、国道5にぶつかる。国道5の交通量は、さすがに多い。海抜約160mにある大沼トンネルを抜け、地方道338へと進む。この道は小沼/大沼に沿っていて、JR函館本線と並行している。338を走りだすとすぐに駒ケ岳の展望が開ける。う〜む、素晴らしい景色だ。やがて、森の中の走行となる。木々の間から、大沼の水面がちらちら見える。走っていて実に楽しい。爺は、このような道を走るのが大好きだ。

キャンプ場は、大沼の東端にある。しかし、行ってみると、キャンプ禁止になっている。先日の台風18号により、木々がなぎ倒されていて、危険だというのだ。さて、困った、どうする爺。爺は、有料だが、この近くにキャンプ場があるのを思い出す。そこには、温泉もある。そうだ、流山温泉キャンプ場へ行こう。今来た道を3kmほど引き返し、横道にそれる。

14:40、流山温泉キャンプ場着。今日の移動、74.5km、3:40、39.5km/hr、20.5km/hr。

流山温泉キャンプ場は、パークゴルフ場、芝生広場、日帰り温泉場に隣接していて、駒ケ岳がバッチリ見え、ここは今回の旅における最高級の景観だ。しかし、キャンプサイトは、全面芝だが、水でびちゃびちゃだ。爺は、少し高くなった水がないサイトにテントを張り、日暮れ前に温泉に行く。ここの入湯料は800円(野営者は600円)と、北海道基準からは高価だ。しかも、休憩室はない。湯質は、黄色く濁っていることから判断すると、鉄分が多いのかもしれない。露天風呂からは、駒ケ岳が良く見えて、爽快。今日は休日のためか、入浴客はかなり多い。

さて、夕食だが、食料は何も準備していないし、この界隈に食料店や食堂はない。しかたなく、温泉の一角にある食堂へ行くが、繁盛してなく、美味しそうには思われない。

定番の魔法の水とえだまめ、それにメインディッシュ(?)の蕎麦を注文する。案の定、真っ先に魔法の水だけ持ってきた。えだまめはこない。厨房をみると、メインの方を先に準備はじめている。おいおい、手順が違うのではないの。メインの前にえだまめだろうがね。

えだまめとメインが同時にきたときには、1杯目はすでに飲み干している。この店は、ちっとも、分かっていない。あ〜あ、今日もまた、魔法の水をもう1杯飲むことになるな〜。しかし、これって、食堂経営の高等戦術なの。

温泉など、ここら一帯の経営は、JRが行っているようだが、まだまだ武士の商法だな。今は、駒ヶ岳の景観で何とか持ってはいるが、根本からサービスの質を改善しないと、そのうち黄昏を迎えると思うよ。ISO9000(品質、サービスの質などの国際標準)の認証を取れば〜。

 【第9日目:040920(月) 大沼〜豊浦】
曇り空の下、身支度して6:42に流山温泉キャンプ場を出発する。大沼の北側を回り、小沼へと走る。朝早いためか、この周回道は爺の貸切状態だ。しかし、寒い、ゴアのレインスーツ上下を着ていても寒気が肌を刺す。今日は、すでに曇り空だ。この旅は、晴れないな〜。

国道5にでて、ひたすら北をめざす。国道5は、ところどころ、二輪帯が狭いところがあるものの、比較的走りやすい。今日は、3連休の最後の日なのか、自家用車が多いようだ。又、大型車も少なくはない。

森町までの下りを快調に走る。さらに内浦湾沿いに北西方向へ走っていると、バックミラーに駒ケ岳の勇姿が映る。爺は、あわてて、バイクを停め、後方の景色を眺め、昨夜購入した「うつるんです」のシャッターを押す。江差でデジカメの電池が切れてしまって、残念無念だな〜。この景色は、鹿児島の桜島に似ているかな。

9:19〜9:37、八雲町の山越内関所跡で一休み。ここまで、51.6km、2:12、43.0km/hr、23.4km/hr。やっと、気温が上ってきたので、レインスーツのズボンを脱ぐ。

爺は、平坦な国道5を快調に走り、長万部町に入る。大浜地区まで走ると、「旅の駅」が右側に見える。少し、早いが一休みして食事にする。今日は、朝食抜きで走っているのだから。

10:58〜12:18、朝・昼食。ここまで、82.3km、3:32、43.0km/hr、23.2km/hr。道が平坦だと、走行距離を稼げるな〜。

屋号につられてレストラン「漁師の家」に入るが、中の広いのに驚く。この店の生業は、その7割ほどが、団体客相手だ。まだ、昼食には早いので、団体客は到着していないが、食卓には、すでに蟹を主としたバーベキュセットが準備されている。爺は、定番の魔法の水と鮭親子丼を注文して、至福の時を過ごす。

店内はだんだん、団体客で混んでくる。左側の席は、お嬢さんたちが、ワイワイ、ガヤガヤ会話しながら、ジョッキ片手に蟹だ、牛だと楽しんでおいでになる。おいおい、そんなに食べて、この後のダイエットがたいへんでしょうが、と、爺は余計な心配をしたくなる。

食後、隣の立派な建物「かに市場」を覗く。スピーカーからは、客に買わせんがため、フルボリュームにしたスピーカーから商品の紹介などを絶叫する。が、しかし、客は醒めている。見たところ、客の財布の紐はとても固い。

長万部町の中心界隈は、多くの食堂、商店が並んでいて、中には、幽霊屋敷になったものも見る。たいへんな過当競争なのだ。

ここで、国道5から国道37に移り、しばらく走ると、北海道らしい草原や原野風の眺めに変わる。静狩からは、緩い上り坂だ。海抜150mの静狩峠と173mの礼文華峠には、トンネルが待っている。その後も緩やかなアップダウンと短いトンネルが続き、豊浦町へ下りる。サイクルメータをみると、15時前だが、すでに目標の120km以上走っているので、今日は、豊浦で宿を取ることにする。

豊浦町内に入り、立ち話をしているおばあさんに宿を尋ねる。この町道を少し進むと、民宿Mがあるという。爺は、民宿Mに行き、交渉する。Mの女将は、今からだと夕食は準備できないが、朝食付きならばよいというので、宿泊することにする。

14:52、民宿着。今日の移動、126.9km、5:46、43.0km/hr、22.0km/hr。宿に入り、すぐに洗濯機を借りて洗濯をするが、天候が怪しいので、廊下に干す。テントをベランダの手すりに広げて乾かし、風呂に入り、TVで相撲を観戦した後、街へ食事に行く。縄のれん風の店に入り、まずは、魔法の水だ。常連客に豊浦町の産業などを聞く。漁業が主な産業だそうだが、やはり、この街も地盤沈下が進むらしく、いろいろ活性化対策を行っているのだという。今日は、3連休の最後の日であって、何やらイベントを行ったそうだ。

爺は、魔法の水、魔の水、大好きな魚料理と最後に焼きおにぎりで燃料を補給し、民宿Mに戻る。

 【第10日目:040921(火) 豊浦〜室蘭〜千歳】
今日、晴れていたら、白老(しらおい)町のポトロ自然休養林まで走って、野営する計画だった。しかし、天気予報では、雨だそうだ。とにかく、行けるところまで行こう。

朝食をしっかり食べ、6:50に宿を出発する。すぐに、上り坂だ。道の駅「とようら」を過ぎたあたりから、雨がぽつぽつ落ちてくる。いくつかのトンネルを抜け、アップダウンの国道37を虻田町へ下ると、本降りになる。ただ、もくもくと走るのみだ。とても、今日は、野営できそうにないので、途中のコンビニから、キャンプ用品を宅配便で自宅へ送る。だいぶ楽になるが、雨の中をしょぼくれて走るのに変わりはない。

8:38〜8:50、伊達市の道の駅「だての歴史の杜」で一休み。ここまで、21.0km、1:07、38.0km/hr、18.6km/hr。走行効率が上らないのは、雨の中を注意深く走っているためだ。

雨はますます、激しさを増す。国道37は、大型車が多い。爺は頭から足先まで、雨と車の跳ね返りでびしょびしょだ。メガネに水滴がたまり、視界は悪くなる。とても、安全に走れそうにない。よし、今回は、東室蘭駅で終わりにしよう。後は、輪行で千歳へでて、明日、早めの指定便(激安チケット)で帰ることに決める。

室蘭近くになると、道幅は片側2車線に広がり、車数も増える。立派な海の架け橋、白鳥大橋の下を通り、工業地帯を数km走ると、東室蘭駅だ。

10:43、東室蘭駅到着。今日の移動、47.6km、2:34、38.0km/hr、18.5km/hr。

雨のかからない場所を探し、輪行モードにするが、バイクはフレーム内まで泥水が入り、汚れていて、後始末がたいへんだ。やっと、輪行袋にバイクを収めて、駅の階段を上る。

千歳までの乗車券と指定券を買い、12:20発「すずらん5号」に乗車する。約1時間後、千歳で下車し、再びバイクを組み立てる。千歳では雨は止んでいる。さて、まず、宿探しだ。駅構内で、町の案内図を眺めていると、ビジネスホテルHRが目に入る。TELすると、空室があり、バイクを洗えて、しかもバイク収納室もあるという。すぐに予約して、16時頃チェックインすると伝える。

雨は落ちていないので、これから、インディアン橋へ行き、鮭の遡上を見ることにして、国道337を走る。橋の位置は、すでに7月に来ているので知っている。7月は裏から入ったが、今日は表から入る。「千歳サケのふるさと館」の近い所にバイクを停め、徒歩で橋を目指す。今日は、連休明けのウィークデイなのに、館の周りは、観光客でいっぱいだ。館の前には、インディアン水車が展示してあるが、その大きさに驚く。直径3mほどなのだ。実際に千歳川に架かる水車もこの展示品と同じのはずだから、7月に来たとき、これを直径1mくらいの水車だと判断したのは、まるっきりの誤りだった。3mほどを1mと判断する、それほど、千歳川周辺のスケールは大きく、錯覚を起こしたのだ。

千歳川に架かるインディアン橋は、観光客でいっぱいだ。全員、欄干から川を眺めて、鮭を探している。このところの雨のせいか、7月よりも水かさは増していて、その分、遡上する鮭を見つけることは難しい。ときどき、ばしゃっと鮭が水面をたたく。かなりの数の鮭が堰の下流に集まっているのは確かだが、よく見えない。今日は、水車で鮭を捕獲するのは休みらしく、水車部分の堰は閉じたままだ。

橋の下流まで歩く。ここは、7月に来たとき、鮭が一休みするため集まるということを地元のおじさんに教えられた場所だ。ときどき、ばしゃっと音がするが、やはり、ここでも鮭の姿はよく見えない。もう一度、橋に戻り、水面を眺める。いるいる、かなり大ぶりの鮭がたくさん集まっている。彼らは、この堰から上流に行くことはかなわず、いらついているのだろうか。

しかし、千歳川の鮭は、何だか人工的であり、上ノ国町の石崎川のように自然ではない。にもかかわらず、これだけ多くの観光客を呼べるのだ。上ノ国町も、少し頭をひねれば、石崎川に観光客を呼び込み、町の活性化になるのだが(本音は、そのようになってほしくない)。

サケのふるさと館に行く。しかし、入場料800円と聞いて入るのを止める。この程度の水族館で、800円は高すぎる。昔、爺が企業人だった頃、仕事でワシントンDCへ行ったが、ここのナショナル美術館、スミソニアン博物館をはじめ、多くの施設の入場料は無料だったし、天下のルーブル美術館だって、当時6フラン(およそ360円)だった。日本でのこの種の入場料は、国際基準に比べて異常に高価だ。爺は、コストパフォーマンスの悪いものには手をださない主義なのだ。この館は、そのうち(今も?)お客は激減して、経営は成り立たたなくなると思うよ。もし、市が経営しているのであれば、無料とはいかなくとも、もっと低料金にして、納税者に還元すべきではないだろうか。

館の前の食堂で遅い昼食にする。食後、7月に来たときに2泊した青葉公園まで走る。前回、ここへ来たのは、わずか2ヶ月前のことだが、ずいぶんと昔のように思える。公園に入って驚いた。いたるところで、多くの木々が根こそぎ倒れていて、キャンプ場も危険のため閉鎖されている。台風18号の爪痕はすさまじい。

ホテルHRにチェックインして、バイクを洗い、風呂の後、小雨の中をこの旅最後の夕食に出かける。少し、リッチにと居酒屋風の店に入り、魔法の水や魔の水、魚料理を楽しみながら、マスターと会話する。爺は、このような食事スタイルが好みだ。

地元では、室蘭〜札幌を結ぶ国道36は、「棺おけ街道」と呼ばれるほど、交通災害が多いという。今日、この道を走らずによかったな〜。でも、次回はどうする、やはり36を走らざるを得ないのではないか。36は、38の釧路〜帯広間よりは「マシな道」ではないのかな〜。

北海道の食べ物が話題になる。爺は、厚岸の牡蠣とサロマ湖のほたてが美味しかったと告げる。マスターの話では、猿払のほたてが最高だが、すべて中国に輸出しているので、一般料理屋でも手に入らないという。ほ〜、日本が食材を輸出ですか、物価の安い中国にね、驚いたな〜。日本では、大きさを揃えろなどと、細かく要求するのだが、中国は、貝のサイズに関係なく、まとめ買いするので、猿払の業者にとって、選別のための人件費が浮き、うまみのある商売だそうだ。なるほど、日本では、高品質を要求するあまり、高価な食材に変わるのだな。

世の奥様方及び消費者方へ、食材が高いという前に、高くなる原因がどこにあるのか、よ〜く考え、行動しましょうね。

すっかりいい気分になった爺は、緊張の糸が切れたのか、ホテルに帰ると早い時刻から爆睡。

 【第11日目:040922(水) 移動日】
朝、雨の音で目が覚める。雨の中を空港まで走る気はおきないので、千歳駅から輪行することにする。爺は、ホテルHRから千歳駅までの数百mの距離を、水溜りを避けながらゆっくり走る。昨日、せっかく洗ったバイクを汚したくないのだ。千歳駅で輪行モードにする。輪行も慣れると、手早くできるものだ。すでに、キャンプ用品を宅配便で送ったので、持ち運びの負担はかなり軽くなった。今後は、この手法を採用しよう。

8:54発の新千歳空港行きJRで空港へ向かう。途中、列車から「棺おけ街道」なる国道36が見えるが、南千歳付近は道幅広く、サイクルツーリングにそれほど支障はないように思える。

ANA56便は、小雨の中を定刻通り10:30に羽田へ向け飛び立つ。

こうして、苦しくても楽しかった北海道西部のサイクルツーリングは終る。

まだ、襟裳岬、知床半島、積丹半島、亀田半島が残っている。それに、北海道の真ん中も。来年も又、必ず来るぞ。

【総括】

(1) サドルを乗りなれたサンマルコ社「ロールス」に変更。尻の痛みは少ない。
(2) 3日目頃、腰やわき腹が痛かったが、その後2、3日のうちに解消。
(3) 背中のDバッグは、やはり負担だ。何とかしたい。
(4) パンク後の空気圧対策:空気ボンベの携帯が必要かな。
(5) 今回、愛車にバックミラーを取り付けて走った。重宝、重宝。
(6) トンネルアレルギーはかなり克服。
(7) 北海道の東と西では、景観がまるで違うことを確認。
(8) 鮭の遡上〜ペアリングに立ち会って、満足。
(9) 雨には降参。
(10) 道の花をめでるのであれば、9月より7月がお薦め。
(11) 野営と宿を組み合わせた今回のツーリングは快適。
(12) 台風18号の爪痕が痛々しい。


【追伸】

10月は、東京〜奥入瀬〜十和田湖を走り、紅葉を鑑賞する計画です。